人材育成成果

経済統合とサステイナビリティ

人材育成:支援スキーム:調査研究支援スキーム(学生)

北蕾/調査地域: 中国 (瀋陽市)

2010.03.30

調査地

中国 (瀋陽市)

リサーチ目的

中国に進出した日系企業の現地化は、遅れていると従来指摘されてきました。現地化の遅 れによって、優秀な従業員の確保や活用に支障が生じて、日系企業の業績に影響をもたらす ことが懸念されています。近年、中国経済の発展とともに、日系企業の中国進出は生産基地 の視点というより、消費市場としての位置付けへと転換するようになりました。これにとも ない、人的資源管理の現地化が、緊急課題として浮上してきました。人材調達の現地化がス ムーズに進行するかどうかは中国国内市場の獲得につながるのです。そこで、本研究は日系 企業の人的資源管理の現地化の展開および変容の実態を考察する。

研究課題

本研究は実地調査を通して、日系企業の現地化を把握します。具体的には3 つのステップを踏まえて検討を進めます。第一に、現地政府による日系企業現地化の評価を確認します。第二に、日系企業内部の管理層に焦点を当て、より具体的な現地化実態に着目します。第三に、日系企業の責任者に焦点を当て、現地化の推進のために行われる政策面におけるサポートを明らかにします。

第一項目における調査は昨年の秋に行いました。その結果は既に報告書にまとめました。今回の調査は第二項目を中心に行いました。調査地域及び、訪問した日系企業は昨年と同じで、中国東北地域の瀋陽市に進出している日系製造業企業3 社です。業種は電機、自動車部品、精密機械産業です。調査方法は課長クラス以上の管理者に対する半構造化インタビュー調査に加え、電話とメールでの補助調査手法も用いました。

成果

今回は、9 名の管理者にインタビュー調査を行なった。1 社につき3 名ずつ選びました。内訳は総経理2 名、副総経理2 名、部長3 名、課長2 名であります。また、国籍の構成からみれば、総経理の2 名が日本人である以外、全員は中国人です。

ここから見た現地化の現状は、副総経理以下のクラスにおいてはほぼ現地化が実現されたことを言えるでしょう。

次は中国人管理者メンバーを中心にして日系企業の人的資源管理の成果をまとめてみましょう。

  1. 安定的な長期雇用が実現しています。7 名いる中国人管理者全員は課長クラス以上であり、企業が創立して以来、現企業に勤めてきました。彼等の話によると、今まで企業管理層における人材の流失はあまり見られず、比較的に安定する管理組織が維持できる。これは、主に、日系企業の優良の雇用環境と高い信用度によるものであると、彼等の多くは評価しています。
  2. 管理チームの若年化が実現されていることです。中国人管理者の年齢構成は以下のようであります。副総経理A=56 歳 部長A=42 歳 課長A=35 歳副総経理B=48 歳 部長B=46 歳 課長B=37 歳部長C=44 歳以上のような年齢構成から、中国に進出する日系企業は若年層を重視する傾向があり、管理チームの若年化が実現されているといえるでしょう。
  3. 現地管理者に自主権を与えることです。中国人の管理者から仕事上の自己裁量について満足できる態度が確認された。7 名の管理者はほとんど自己の仕事に裁量の権力があり、そして、自分の能力の発揮にも満足できる態度を示してくれました。
  4. 職場のメンタルヘルスに意識していることです。職場のメンタルは人的資源管理にとっては重要な課題の一つであることが近年意識されつつある。今回、管理層メンバーたちの仕事の報酬や処遇および、キャリア形成に対する態度から、日系企業の職場におけるメンタルヘルスに対する取り組みが行われていると考えられます。例えば、多くのマネージャーは報酬に対してはむやみに他の外資企業や大手国有企業と比べず、自分のライフスタイルを中心にして仕事キャリアを設計していることが印象深いです。

以上は、実地調査からみえてきた主な成果をまとめました。こうした結果は日系企業における人的資源の見地化が着実に進んでいることを物語っています。今まで、日系企業の見地化スタイルはしばしば批判されてきましたが、中国従業員の仕事意識の変化や日系企業の経営戦略の改善により、良い方向に向っています。そのことは否定できないでしょう。ただ、今回中国人管理層に、日本的な生産管理スタイルに改善をしてもらいたいところについて尋ねてみると、もっと柔軟性を取り入れる姿勢がほしいという意見がやや多いようです。したがって、中国に進出している日系企業に今までの実績を維持しながら、もっと柔軟性のある生産管理を取り込んでいくことを提言したいと思います。それは、更なる現地化の実現につながり、長期的な企業成長をもたらすに違いありません。



成果報告書


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