拠点リーダー挨拶

アジア地域統合のための高度な専門性を持った人材の育成を目指して

写真:天児慧
天児 慧

GIARIの目標は、国益を超えた「地域益」の実現に貢献できる包括的で高度な専門性を有した人材を育成し、アジア地域の深刻な諸問題を解決しつつアジア統合を推進する世界的な拠点形成を目指すことです。確かに、アジア統合はデファクトとして進行しており、また、環境問題や大規模な自然災害といった問題をめぐる協力も深まりつつあります。しかし一方で、アジア地域には、政治体制や経済発展の差異や、宗教・生活様式の多様性、さらには歴史に根差す相互不信など、協力し合う上での阻害要因も多く、制度としてのアジア統合は著しく遅れています。しかも、アジア各国では地域統合や共同体構想が盛んですが、その理論的研究を人材育成と一体のプログラムとして展開する拠点はなく、研究と教育の有機的連携が実現していないのが現状です。アジア統合の理論研究や人材育成は極めて重要な課題なのです。

2007年9月、本プログラムを開始して3年目のシーズンに入りました。GIARIでは、政治学・経済学・社会学の方法論的基礎に立脚しつつ、領域間の重層性・複合性を配慮した新しい統合研究のアプローチ(GIARIモデル)を開発し、その理論的成果を新しい教育カリキュラム(GIARIメソッド)として展開しています。GIARIモデルは、領域とアプローチのキー・コンセプトの組み合わせ、すなわち、

  1. 政治統合とアイデンティティ
  2. 経済統合とサステイナビリティ
  3. 社会統合とネットワーク

に基づき展開され、またその成果は、領域とキー・コンセプトの「3×3×3のマトリックス」に体系化され、GIARIメソッドとして人材育成カリキュラムへフィードバックされています。このような重層性・複合性に焦点を当てた人材育成と理論研究は他に例を見ないユニークなもので、我々の活動の基本的な枠組みとなるとともに、アジア地域統合の未来を切り拓くための礎ともなりうるものです。GIARIの中核拠点である早大アジア太平洋研究科は、アジア太平洋地域の様々な問題を専門的に扱う世界最大規模の独立大学院です。英語と日本語による二言語の教育システムが定着しており、学際的なアジア研究の基盤があることと合わせ、本プログラム推進の強みとなっており、我々は世界的に見ても類のないアジア統合人材育成のハブを目指し、全力を挙げて今後の活動を展開していきます。

2009年12月