人材育成成果

GIARI全体 & 政治統合とアイデンティティ

人材育成:支援スキーム:調査研究支援スキーム(助教)

勝間田 弘 / 米国(ニューオリンズ、ワシントンDC)

2010.02.15

所属: アジア太平洋研究科
氏名: 勝間田 弘
日程: 2010年2月15日 - 2010年3月1日

渡航地(国・都市名)

米国(ニューオリンズ、ワシントンDC)

目的

  1. 「ASEAN研究センター」設立記念シンポジウムにて講演(ワシントンDC)(2月16日)
  2. 米国国際学会(ISA)にて論文を発表(ニューオリンズ)(2月18日〜20日)
  3. 米国公文書館および国会図書館で資料収集(ワシントンDC)(2月22日から27日)


成果

1.について
 「ASEAN研究センター」(アメリカン大学)は、米国の首都ワシントンDCに設立された専門機関である(理事長Amitav Acharya教授)。このセンターの設立記念式典には、百名以上の参加者が募った。参加者の大半は、米国の政府当局者と各国の大使館員、ワシントンDC近辺の大学・研究所に所属する研究者たちであった。式典は、東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局長のSurin Pitsuwan氏と、米国のASEAN大使であるScot Marciel氏による基調講演で開幕した。彼らの講演の後、「ASEANと東アジア地域主義」と題されたシンポジウムが始まった。このシンポジウムにおいて、パネリストの一人として"ASEAN and East Asian Regionalism "というテーマを議論した。なお、他のパネリストは、Alice Ba氏 (University of Delaware)、Mely Caballero-Anthony氏(RSIS Centre for Non-Traditional Security Studies, Singapore)、Paul Evans氏(University of British Columbia)であった。



2.について
 今年度の米国国際学会(ISA)では、二つの論文を発表した。一つ目は"Mimetic Adoption and Norm Diffusion: ASEAN Security Community, Free Trade and Human Rights"と題された、規範の伝播のメカニズムを探る論文である。分析の焦点は、グローバル社会から東南アジアへの規範の伝播である。ASEANは、「紛争管理」「自由貿易」「人権外交」といったグローバル社会の規範を採用している。この事例は「真似採用」(mimetic adoption)という視点で捉えられる。ASEANは、近代国家で構成されるグローバル社会の正統な国際機関として認められたくて、欧米で発展している国際社会の規範を真似採用しているのである。このような議論に対して、聴衆からは多くの質問・コメントが寄せられた。とくに、概念の整理が重要という指摘が多かった。これは今後の重要な研究課題である。

 二つ目は"East Asian Regional Security Governance: Bilateral Hard Balancing and ASEAN's Informal Cooperative Security"と題された、アジア安保構造の特色に焦点を絞る論文である。アジアの安保構造の諸要素は、独特の特徴を有している。まず、パワーバランスのメカニズムについては、「ハードバランス行動」および「二国間主義」が支配的である。他方、協調的安全保障については、「インフォーマルな抑制メカニズム」および「小国のリーダシップ」に特徴がある。このような指摘をスタート地点に、この論文は、それぞれの特徴の背景にある要因を分析した。なお、この論文は、イギリスのウォーウィック大学が統括している編著プロジェクトの一章となる原稿である。学会で参加者からいただいたコメントは、論文の修正に役立てていける。

3.について
 米国国会図書館では、上院の外交委員会の資料を閲覧することができた。ここで得た情報をもとに、公文書館の議会担当部署から、さらなる情報を得ようと試みた。具体的には、重要な会合の議事録を入手しようとした。しかし、時間的な制約があり、滞在中にコピーを入手することはできなかった。だが、後日に郵便でコピーを送ってもらえるように手続きをした。

 米国公文書館では、1980年代に国務省が発表した、東アジアにおける会合の資料を入手することができた。国務長官がASEAN会合に参加した時のコメントには、意外な情報が多く盛り込まれていた。以上を鑑みるなら、この度の滞在は、有意義なものだったといえる。

前のページへ戻る