人材育成成果

GIARI全体 & 政治統合とアイデンティティ

人材育成:支援スキーム:調査研究支援スキーム(助教)

勝間田 弘 / カナダ(モントリオール)

2011.03.15

所属: アジア太平洋研究科
氏名: 勝間田弘
日程: 2011年3月15日〜2011年3月20日

渡航地(国・都市名)

カナダ(モントリオール)

目的

「International Studies Association (ISA)年次会合において論文発表(3月19日)

成果

今年度の米国国際学会(ISA)では、二つの論文を発表した。一つ目は"Asia-Pacific Security Governance"と題された、アジア太平洋地域における安全保障ガバナンスについて検討する論文である。ここでは、域内(アジア特有の安全保障の問題)および域外(グローバル社会の課題)の要因により、アジアの地域安保ガバナンス構造が定められる実態を考察した。これは、自ら企画したパネルの一部である。この度のISAでは、世界各国の大学でアジアの問題を専門に研究する者たちを集めて、独自のパネルを組織した。参加者は以下の五名である。

  • Brian L. Job(ブリティッシュ・コロンビア大学)
  • David Capie (ビクトリア大学、ニュージーランド)
  • Craig Snyder(ディアキン大学、オーストラリア)
  • Hiro Katsumata(早稲田大学)
  • Shahar Hameiri(マードック大学、オーストラリア)(討論者)

今回のパネルには、カナダや米国の大学に所属する研究者たちが多く集まった。アジアの独自性と国際関係論の一般性という、二つのテーマの関係について議論が盛り上がった。フロアーからの意見については、両者の関係は相互補完的であるというものが多かった。

二つ目は"Social Recognition and Norm Adoption"と題された、規範の伝播のメカニズムを探る論文である。分析の焦点は、グローバル社会から東南アジアへの規範の伝播である。ASEANは、「紛争管理」「人権外交」といったグローバル社会の規範を採用している。この事例は「真似採用」(mimetic adoption)という視点で捉えられる。ASEANは、近代国家で構成されるグローバル社会の正統な国際機関として認められたくて、欧米で発展している国際社会の規範を真似採用しているのである。この類の議論は、昨年の学会でも発表している。今回の発表においては、伝播のタイミングについて詳細に検討した。社会心理学の理論を援用しながら、いつ、どのような条件下で規範は伝播するのか(すなわち、いつ、どのような条件下で国家は新しい規範を真似採用するのか)について仮説を掲げた。このような議論に対して、聴衆からは多くの質問・コメントが寄せられた。とくに、規範の内部化という問題の扱いが不十分という指摘が多かった。これは今後の重要な研究課題である。



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