研究成果

GIARI全体 & 社会・文化領域

研究:出版物:Working Papers 2008年度(英語-27,日本語-4)

中国人大学生に見られるナショナリズム意識と歴史認識問題に対する態度
―2007年復旦大学調査の分析結果から― / 吉元 成美・園田 茂人

2009.03.31

Working Papers

拠点メンバー、共同研究者、特別研究員、フェロー他、主に若手研究者の論文を対象にアジア地域統合に関する優れた論文を、ワーキングペーパーとして発刊する。言語は英語もしくは日本語。寄稿された論文は、編集委員会での審査を経て刊行される。刊行されたペーパーは、本学図書館をはじめ関連大学図書館、研究機関等に寄贈される。

GIARI Working Paper Vol.2008-J-4


要約

現代中国の、とりわけ若者に、愛国主義教育の影響からか、ナショナリズム意識が見られるとする指摘は少なくない。しかし、その特徴をめぐっては議論が混乱しており、愛国主義教育が反日的で偏狭なナショナリズム意識を生み出しており、これが日中関係に悪影響を与えているといった議論も存在する。
本稿では、現代中国の若者のナショナリズムに関する先行研究を検討した上で、ナショナリズム意識に対して操作的定義を下し、12 の質問文を用意して復旦大学生417 名を対象に、2007 年から2008 年にかけて質問票調査を行った。因子分析の結果、自尊・自強、反日、偏狂の3つの因子を抽出することができた。また、各ナショナリズム因子の平均値や因子負荷量を対比することで、ナショナリズム意識の中では、特に自尊・自強的因子が大きいことが明らかになった。
他方、多くの学生は、歴史認識問題が解決していないと思っており、その決着のためには「心からの謝罪」や「歴史教育の充実」を求めていることがわかった。加えて、回帰分析の結果、これらの歴史認識をめぐる判断には、自尊・自強ナショナリズムよりも反日ナショナリズムの方が大きな影響を与えていることが明らかになった。
調査対象者が愛国主義教育を受けたエリート学生であることから、得られた知見は、今後の日中関係、広くは東アジアにおける地域統合の将来を考える上でもきわめて貴重なものとなっている。


Index

はじめに
I ナショナリズム意識と歴史認識問題に対する態度の操作的定義
II データ
III 分析結果
1.ナショナリズム意識の特徴
2.歴史認識問題に対する態度に見られる特徴
3.歴史認識問題に対する態度に対するナショナリズム意識の影響
IV 結果の解釈
おわりに

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